08-01 著者:admin
日本舞踊五大流派の一つで、約300年の歴史を誇る西川流の西川箕乃助(64)が、十一世として「西川扇蔵」を襲名した。もっとも古い流派の一つだけに「古風な芸風を大切に」と決意を語るが、現在、放送中のNHK連続テレビ小説「虎に翼」で所作指導も行っており、さまざまな場面で〝和の美〟を追求し続ける。
7月29日の扇蔵襲名のタイミングに合わせ、「虎に翼」の冒頭流れる「所作指導」のスタッフ名も〝襲名〟を果たした。扇蔵はこれまでもNHK大河ドラマ「北条時宗」(平成13年)のほか、昨年の朝ドラ「らんまん」など多くのドラマで所作指導を行っている。
扇蔵は昭和35年、父である十世扇蔵(1928~2023年)の長男に生まれ、38年に初舞台。歌舞伎舞踊の人間国宝だった父の後継者として歩み、古典だけでなく創作、さらに宝塚歌劇団やOSK日本歌劇団での振り付けでも活躍している。
昨年7月14日に死去した父の名跡を継ぐにあたり、「流儀の芸風である古風さを大切に、新たな名を背負って現代に通じる新作も発表したい。江戸時代から続いてきた日本舞踊を次世代に残すため頑張りたい」と、抱負を述べた。
東京都台東区の下谷神社で7月29日、襲名を寿ぎ「七福神」を端正に舞った扇蔵。指先まで神経の行き届いた動きは、着物が登場するドラマの所作指導で引っ張りだこだ。これまでNHK大河ドラマだけでも「新選組!」「風林火山」「篤姫」などで、所作指導を行ってきた。華やかな現場を想像するが、扇蔵は「地味な仕事」と説明する。「現代は俳優さんの日常に着物がほとんどない。すると立ち振る舞いから、お辞儀の仕方までご存じない。歩き方も洋服とは当然違います」
門弟とも手分けしてドラマのリハーサルに立ち会い、例えば着物で遠くの物を取る際、反対の手でたもとを抑えるしぐさをするが、これを「型として覚えて」などとアドバイス。自然な所作が身に付くには本来、時間がかかるが「(限られた時間内で)何度も練習させるわけにもいかず、みっともなくない程度に振る舞えるように」を目指す。
こうした舞踊以外の仕事に励むのも、日本舞踊人口が減る中、「いつか日本の古典文化が見直される時代が来たとき、きちんとした形で残したい」との思いからだ。幸い門弟に加え長女、次女とも日本舞踊の稽古に励んでおり、後継者育成にも努める。
来年10月26日に歌舞伎座(東京都中央区)で十世西川扇蔵三回忌追善、十一世西川扇蔵襲名披露の舞踊公演「西川会」の開催を予定している。(飯塚友子)